押繪と旅する男

  • 浜村純 鷲尾いさ子 藤田哲也 天本英世 飴屋法水
  • 120分钟
  • 浅草・宝蔵院前。元木邦晴少年が風呂敷包みを片手に兄… 浅草・宝蔵院前。元木邦晴少年が風呂敷包みを片手に兄嫁の百代と旅立とうとしている。どこからか少年の耳に「やめた…ほうが…いい」という声が。現代の東京。ひとり暮らしの邦晴は第二次大戦中、特高として名をはせたが、その犠牲者に会っても事の状況すら分からぬ弱々しい老人だった。老人は自分を呼ぶ声に導かれ浅草寺の境内で、今は存在するはずのない凌雲閣を見つける。頂上にいた青年は邦晴の兄・昌康だった。大正時代。邦晴に魚津の蜃気楼を見てみたい、と夢見るように語る兄は、新婚だというのに家にいつかず凌雲閣に通いつめる。残された兄嫁に邦晴は同情と淡い恋心を寄せる。昌康は双眼鏡からチラと見えた覗きからくりの押絵細工の中の娘・お七に心奪われていた。押絵をからくり屋から奪った昌康は、寺の裏手で邦晴少年に双眼鏡を逆さに持って自分を見てくれと頼む。泣きながら断りきれずにその通りに邦晴がすると、昌康の姿は消え、押絵の中に入ってしまっていた。ハッと目覚めた邦晴老人。列車の向かいの座席には若いままの兄の姿。老人ホームに古い友人を訪ねた邦晴老人は職員に、自分が今訪ねたと思っていた友人は先月亡くなったと聞いて、狂気の叫びをあげる。その声に驚いたかのように、汗びっしょりで目覚める邦晴少年。魚津に向かう列車の中、百代が優しく自分を見つめている。宿でひとつの部屋に泊まった2人。邦晴の風呂敷包みの中にはお七と昌康の押絵が。百代は愛情と嫉妬の視線を押絵にそそぎ、苦しさのあまり泣き出す。百代は邦晴少年の唇を自分の唇でふさぎ、崩れていく。翌朝、彼女は置き手紙を残し去っていった。山寺で押絵を住職にたくす邦晴少年は、山道で邦晴老人に出会う。その時、蜃気楼の出現を合図するサイレンの音が鳴った。砂丘では邦晴少年と邦晴老人、そして百代、昌康ら、みながたたずんで、ただ茫然と蜃気楼を見つめていた。

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