蔷薇的叹息

  • 小川節子 伊藤義郎 山科ゆり 湊英二郎 左子 深町真喜子
  • 120分钟
  • 高校三年の平岡亜紀夫と笹原ユミは、大学受験を来年に… 高校三年の平岡亜紀夫と笹原ユミは、大学受験を来年に控えて準備に余念がない。亜紀夫は学校でも一、二をあらそう秀才である。仕事の鬼である父英二郎はめったに家に帰らない。朝井涼子が突然、亜紀夫の目の前に現われたのはそんな時だった。身体は一人前でもまだ童貞の亜紀夫を甘美な陶酔の世界に導くのは、涼子にとって赤子の手をねじるようなものだった。亜紀夫は涼子におぼれ、何もかも忘れて情欲にのめりこんでいった。そんな亜紀天の異常さに気がついた英二郎は、原因が涼子だと知り狼狽する。かつて涼子は英二郎の秘書で、愛人だったのだが、妊娠すると手切金を与えて放り出してしまったのだ。身も心も捧げ尽した女にとってそれはあまりに残酷だった。涼子は復讐を誓った。英二郎のもっとも愛する者を奪い、目茶目茶にしてやろうと……。英二郎は涼子を訪ね、亜紀夫と手を切るよう懇願したが、冷たい微笑を浴びさせられた。そんな涼子を英二郎は暴力で犯し屈服させようとしたが、すでに涼子は昔の涼子ではなかった。いまの亜紀夫は、涼子との欲情に溺れ、大学進学を諦め、船乗りになりたいと思っていた。そんなある日、亜紀夫は父と涼子の秘密を知った。が、涼子はいつしか本気で亜紀夫を愛してしまっていた。捨てないでと哀願する涼子を亜紀夫は突きとばしく立ち去った。混乱した亜紀夫は海岸近くの廃屋に駈け込んだ。その亜紀夫を心配して追って来たユミは、美しい裸身をさらして亜紀夫に迫った。そして二人は自然に結ばれていった。それから数カ月--横浜港の桟橋に停泊した外国航路の大型貨物船の前では、亜紀夫とユミが別れを惜しんでいた。亜紀夫は貨物船のコックとして乗り込んだのだった。汽笛が鳴り、貨物船は港を離れて行った。次第に小さくなっていく船影を桟橋からはなれた倉庫の片隅でひっそりと見送る女--涼子だった。が、その表情は意外にさわやかだった。水平線の彼方に貨物船が消えるのを見送る。やがて、孤独な後姿が立ち去って行った。

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